誰をどのように護るのか --- CDAの目的と効果について

* 誰をどのように護るのか *
-- CDAの目的と効果について --

白田 秀彰

Abstract

本論は、情報品位法とオンライン児童保護法の内容と問題点について検討し、 これらの法律の目的と効果を考察するものである。その結論は、 これらの法律のいずれもがオンライン利用者を不適切な内容から保護する効果を持ち えないと同時に、 インターネットでの情報の送受信について法執行能力を確保するという政府側の目的 に適合するものであることを指摘する。

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1 背景

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1.1 未成年の保護

通信品位法(Communications Decency Act: 以下「CDA」) およびオンライン児童保護法(Child Online Protection Act: 以下「COPA」) の正式名称みると、これらの法律が、 いずれも社会的に容認されないと考えられる言論から、 一般市民又は未成年を保護することを目的としていると謳っている [1]。しかし、 この立法趣意それ自体についてまず疑問がある。

私たちが日常生活において、メディアを経由して受ける情報の大部分は、 既存のテレビや出版物を経由したものである。コンピュータ・ネットワークは、 潜在的にテレビや印刷といった伝達経路を凌駕するものとして期待されている。 しかし、立法の前提となっている現在の情報流通環境を考えるとき、 未成年の精神的健康への現実的危険という点で、コンピュータ・ ネットワークはテレビや雑誌などのメディアの影響力には遠く及ばない [2]。また、 未成年の生活時間を占有する媒体として、ビデオ・ゲームの存在は大きい。ビデオ・ ゲームの内容として、際立って暴力的なものが多数存在することには、 最近批判が加えられるようになりつつある [3]

アメリカでは未成年者保護の観点から、 テレビや雑誌の内容について~とくに暴力表現を排除する目的から規制が設けられて いる。 1996年電気通信法で 2000年1月1日までに導入することが決定された V-Chipもその一 つである [4]。我が国では、 放送業界を中心とした表現の自由を擁護する主張を背景にV-Chipの導入は見送られた [5]。また我が国では、 電車の吊り広告やコンビニエンス・ストアの店頭など未成年の目につき易いところに、 猥褻には該当しないものの、 悪影響を与えるだろうと考えられる表現が多数存在している。 こうした部分を改善せず、 我が国においてもインターネットにおける言論内容の規制論議が持ち上げられつつあ るのは、立法目的からして均衡を欠いているように思われる。

付け加えるなら、暴力表現や幼児性愛に関する表現については、 未成年の精神衛生に害悪を与えることが実証されているようだ [6] が、 性表現そのものが思春期をすぎた未成年に具体的にどのような害悪を与えるのか、 という疑問もある。というのは、 生殖活動は人間の最も基本的な生活活動の一つの要素であることは否定できないから である [7]

同様の不自然さは、やはりCDAおよびCOPAにおいてみられる。 後に詳しく取り上げるが、これらの法律が制定されたとしても、 これらの法律の効果として未成年を有害だとされている情報から隔離する効果は~ほ とんど期待できないからである。CDAやCOPA の批判者たちが指摘するように、 これらの法律の実際の効果は、 ネットワークの運営や管理を行っている人々にネットワークに流通する情報内容に関 する閲読を義務づけ、ネットワークを利用しているすべての人について自らの同一性 (identity)を明らかにするように強制することにある。

1.2 法執行能力

このように整理すると、CDAやCOPAが単純に猥褻な(obscene)表現や下品な(indecent) 表現を規制するものであるという単純な把握では、 その基本的な問題点を理解できないことがわかる。 アメリカでは 1980年代末から始められた、 ネットワークを政府の規制下に収めるための一連の作業の一環として把握することで、 CDAやCOPAの意義が明らかになってくるのである。 これらの背景の詳細な解説としては、拙稿「情報テクノロジーの進展と法的課題」 およびそれを要約した「アメリカにおけるインターネットへの司法権力の介入」 を参照していただきたい [8]

ここで簡単に概要を紹介しておく。 通信技術がアナログ伝送からデジタル伝送へと発展するにともない、警察・検察・ 裁判所などの法執行機関(law enforcement agency) が法的に容認され、 また必要としている通信の傍受能力が脅かされるに至った。すなわち、 法執行機関の傍受 (interception)能力への質的脅威である。さらに、 1990年代半ばのインターネットの商業利用解禁にともない、 デジタル信号による通信量の爆発的な増大のため、 通信内容を監視する法執行機関の能力の限界を越えつつある。すなわち、 法執行機関の傍受能力への量的脅威である。

アメリカにおいて、質的脅威は三つの反応を呼び起こした。第一に、 政府がネットワークの電子的監視(electronic surveillance) を行うことの必要性を正当化する事例について、それら機関が宣伝を始める。第二に、 それら機関が通信内容を傍受しうるように、 電話回線や他の同様の通信回線をあらかじめ設計するように強制する法律を制定しよ うとする。第三に、 通話に用いられる暗号の種類をあらかじめ司法当局が解読できるものに限定しようと する法律を制定しようとするものである。第一の動きは、マスコミにおいて見られる、 インターネットの暗黒面および脅威の扇情的な報道として見られる。 第二および第三の動きは、1994年以来、 ネットワークでたびたび話題となる政府による暗号規制の問題として現れている。 最近では、暗号鍵寄託制度(Key Escrow, Key Recovery)が問題とされた。 我が国でも組織犯罪対策法案に盛り込まれている「盗聴法案」 と呼ばれているものがこれに対応すると考えられる [9]

そして、量的脅威への対応がCDAおよびCOPAであるとみるのが筆者の把握である。 その目的は、猥褻情報、危険情報の規制という点にあるのではなく、 猥褻情報や危険情報などの存在とその流通について、 司法当局が必要に応じて把握することができる機構を確立することが目的なのである [10]。以下、 筆者の把握を根拠付ける分析を紹介する。

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2 CDAとCOPA

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ここで、 CDAとCOPAの内容を簡単に紹介する [11]

2.1 CDA

改正前の合衆国法典47編に規定されていた1934年通信法 [12]は、 1968年の改正時に迷惑電話を規制することを目的とする条項である 223条を追加した [13]。その後の改正で223条は223条 (a)項となる。すなわち、もともと223条 (a)項は、 電話通信のみに適用されてきたのであり、この223条(a)項を巡る判例は、 電話通信に関する事例について判断されてきたのである。

単純化して言えば、CDAは、この223条(a) 項で用いられていた``telephone''を ``telecommunication''と置きかえることで、 迷惑電話規制に関連して従来適用されてきた法理をコンピュータ・ ネットワークに拡張しようとするものである。本論に関係する条文を要約すれば、 州際通信または国際通信において [14] 電気通信装置 (telecommunications device) を用いて、 故意に他人を侵害する目的で、 猥褻または下品な内容を送信したもの [15]、または、 電気通信装置によって故意に猥褻または下品な内容の通信を、 受信者から送信要求されたか否かにかかわらず、 受信者が 18 歳未満であることを知りながら、 通信を開始したもの [16]、 これに加えて、知りながら(knowingly) 自らの支配下にある電気通信設備を禁止されている種類の通信に使用させたもの [17] について合衆国法典18編に基づく罰金刑(25万ドル)若しくは 2年以下の拘禁刑、 または、それらを併科するものである。後二者の類型については、 彼が積極的に情報内容を送り出さなかったとしても、 法的責任を負わなければならないことに注意されたい。

批判者たちは、この法案の文言に従うと、 情報伝達経路の途中に位置するコンピュータの管理者までが、 実際に猥褻的な情報内容を提供するコンピュータにおいて生じた法的責任までも負担 しなければならないことをとくに問題とした。インターネットでは、 多数のコンピュータが境目なく結合して動作するので、この法案のもとでは、 同法で禁止される種類の情報内容の作成者だけでなく、 これが伝達されて行く経路として使用されたコンピュータ管理者までが訴追されるこ とになる。ところがこうした情報の伝達は、ほとんどが自動的に行われているので、 コンピュータ管理者はどのような内容が伝達されているのかを知ることは困難である。

また、通信事業者は、この法案に従うならば、 自らのネットワークの中に存在するすべての通信について検閲を行わなければならな くなる。しかも、「下品」について明確な規準が存在しないので、 最も広い規準においてこれらの内容に該当するものと思われる通信を排除しなければ ならない。結果的にこれらの規制は、 ネットワークで提供される議論の内容を著しく制限することになる。すなわち、 CDAは先に述べた「量的脅威」 への対処として有効に機能する [18]

2.2 CDA違憲判決

しかし、裁判所は従来の憲法論の視点からCDAを審査した。 1997年6月の合衆国最高裁違憲判決 [19]で問題とされたのは、 「下品 (indecent)」および「明らかに不快(patently offencive)」 という部分である。詳細な検討は後に行う。最高裁判所法廷意見は、 CDAのすべての規定は、 それらが従来の憲法判断において合衆国憲法修正第1条の保護を受けるとされている 「下品」および「明らかに不快」な言論に適用されうるため違憲であると判断した。 とくに合衆国法典47編 223条 (a)(1)(B)、同(a)(2)および同(d) について、「下品」 および「明らかに不快」 な言論を伝達してはならないとされる18歳未満の利用者を特定することは非常に困難 であり、 結果としてすべての通信においてそれらの種類の言論の伝達を停止せざるえないと認 定した。一方、オコナー(O'Conner)裁判官およびレーンキスト (Rhenquist) 首席裁判官は、同意意見の中で、CDAがインターネットに「成人領域 (adult zones)」 を形成するための地域地区規制法(zoning law) 類似の法律であると把握し論を展開している。その結論として、 成人と1人または2人以上の未成年との間の通信において、 下品な言論の使用を禁じる限りでは合憲でありうると指摘している。

これらの判断から、CDAを合憲な法律とするためには、(1)禁止される種類の言論を 「下品」および「明らかに不快」という規準ではなく、 より憲法論的に明確に定義されており、 かつ容認されている規準に置きかえる必要がある。また(2) 合衆国憲法修正第1条で保護されない種類の言論 (猥褻表現、名誉毀損表現等) より広い種類の言論を制限することが容認されている未成年を保護する目的を達成す るためには、 18歳未満の利用者を特定する合理的な手段を提示する必要があることになる。

2.3 COPA

COPAは、この最高裁判決を受けて、CDAの内容をより「厳密に狭く」 改訂したものとして提案された。具体的には、 1934年通信法の第2編の末尾に新たに231条を追加するものである。したがって、 迷惑電話規制をネットワークに拡張しようとした CDAとは異なって、 新たにWorld Wide Web (以下「Web」) を利用して商業目的で配布される情報内容への未成年のアクセスを禁止する条項を創 設したわけである。ここで注意しなければならないのは、 COPAが最高裁判決で示された条件に合致するものであるとしても、筆者がいう 「量的脅威」に対する対処として機能する限り、批判者たちが指摘するように、 ネットワークへの検閲法規としては充分に役に立つことである。

COPAでは、知りながら(1) 未成年に有害な情報内容を未成年に商業目的で提供した者には、 5万ドルを越えない罰金又は6ヶ月を越えない禁錮刑または、 その両方を課すものとした。また、(2)故意に(1)の行為をした者については、 それぞれの行為について上記の罰が与えられる。この場合、日々の違反は、 それぞれ独立した行為とみなされるので、例えば1週間~法に反した場合は、 全体としての罰は上記の7倍になる。また、(3)故意犯については、 民事訴訟による損害賠償も可能とされており、この場合も日々の違反は、 それぞれ独立した行為とみなされる [20]。この条項の効果として、 取締権限のある政府の職員だけでなく、合衆国市民の誰からでも、 提供している内容が「未成年に有害である」と指摘された情報提供者は、 即刻その情報内容の提供を停止しなければ、 莫大な刑事罰又は民事訴訟による損害賠償に服さざる得ない危険に直面する。 対立点のある微妙な問題に関する情報提供を行っている人物は、 おびただしい訴訟に直面してしまうことになるだろう。これは、 合衆国の市民すべてを検閲官とするのに等しい。

COPAは、1998年10月21日に一般歳出法案の一部として成立した。 すでに COPAの違憲性は指摘されていたところだったので [21]、翌22日には ACLU 等の諸団体・ 諸個人が、 COPAの違憲性に関する確認判決および差止命令による救済 (declaratory and injunctive relief) を求めてペンシルヴァニア東部地区連邦地裁に提訴した [22]。連邦地裁は、 COPAの発行を翌日に控えた11月19日に一方的緊急差止命令を発給し、 COPAは施行されないままになっている [23]。裁判日程から判断して、 COPA違憲訴訟の最初の判決は1999年2月になるとみられる。

2.4 CDAとCOPAの差違

CDAでは、電気通信機器を用いた通信 (by means of telecommunications device [24]) および、双方向コンピュータ・ サービス (interactive computer service [25]) を対象としていたのに対して、 COPAでは商業目的 (commercial purpose) でなされるWebを利用した通信 [26] と、対象を狭く絞り込んでいる。また、CDAで批判の的の一つだった、 通信事業者の責任についても、 自ら作成したのではない情報内容の伝送について責任を負わないと明示した [27]。すなわち、 CDAでは広い意味での電気通信全体が規制対象だったのに対して、COPAでは、 商業目的のWebによる情報発信のみが対象になっているのである。 ここで検討すべき点は、「商業目的」という言葉の憲法論条の解釈、 およびインターネットにおいてwebのみを規制対象とすることの実質的な意味である。

次に、CDAで規制されていた言論は「猥褻な、淫らな、好色な、 卑猥な又は下品な論評、要求、提案、申し出、 画像その他の通信 [28]」 「現代の社会的規準に照らして不快 [29]」 とされる用語であるとされていた。最高裁判所は、このうち「下品 (indecent)」 「明らかに不快(patently offensive)」という規準が、 刑事罰を設ける場合に必要とされるだけの具体性を備えていないため違憲であるとし た。そこで、COPAでは、従来からの憲法理論で定義されており、 かつ未成年の保護を目的とした言論の自由の制限理由として容認されてきた 「未成年に有害(harmful to minors) [30]」な表現を規制するものとした。 しかし「未成年に有害」である表現から未成年 (CDAでは18歳未満 [31]、 COPAでは17歳未満 [32]) を隔離するために、 利用者の年齢を判別する方法の困難さに関する最高裁判所の指摘に応えられたか否か については、問題が残っている。詳細な検討は後に行う。

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3 COPAの合憲性

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3.1 言論規制の要件

ここで、政府が言論を規制する場合に解決しなければならない要件について、 取り上げる。

まず、猥褻(obscine)や名誉毀損(libel and slander / fighting words) に該当する言論は、 修正第1条の保護を受けられないものとされている [33]。ただし合衆国最高裁判所は、 猥褻に該当する言論の種類を厳格に狭く解釈している。 表現されている内容を規準として言論を規制しうるのはこの二種類であり、 それ以外の表現に対する内容を規準とする規制は、憲法違反であることが推定される (strict scrutiny)。

何をもって猥褻に該当するかという点について、現在の合衆国最高裁判所は、 地域的規準(community standard)を採用している。すなわち、(1)平均人が、 その時の社会の規準にてらして、 その表現が全体として好色な興味に訴えると考えるか、(2) 法が明示的に定義しているような形で、性行為を不快なしかたで描写しているか、(3) 全体として見て、その作品が文学的・芸術的・政治的・ 科学的価値をまったく欠いているかという規準である [34]。したがって、 ある事件について、猥褻か否かを確定することは、 どの地域の判断を採用するかにかかることになる。この点について、 連邦最高裁判所は連邦全体に適用可能な規準は存在しないとしている [35]

また、商業的言論(commercial speech)、 すなわち営利活動遂行のために広告形式で行う種類の言論については、 かつて修正第1条の保護を受けないとされていたが [36]、 1970年代以降これもまた修正第1条の保護する言論であるとされるようになった。 しかし保護の程度は、 他の種類の言論よりも弱いものとされている [37]

上記以外の種類の言論については、修正第1条に基づく保護が与えられることになる。 こうした修正第1条の保護が及んでいる種類の言論に規制を設ける場合には、 政府は次の二点について立証しなければならない。すなわち、(1) その言論を制限することが「止むに止まれぬ公の利益 (compelling interest)」 であること [38] (2)その規制手段が(1) の利益を達成するための必要最小限度の手段であることである [39]。(1)については、 単にそれが公の利益に貢献するにとどまらず、 目的とされている利益に直接に関係するものでなければならず、また、 実質的かつ直接的にその利益を実現するものでなければならない。(2)については、 反証として「他のより制限的でない手段 (least restrictive alternatives)」 が存在すること挙げることで、覆されることになる。

3.2 COPAに関する検討

上記の要件をCOPAが満たしているか否かについて検討する。

まず、未成年の保護が止むに止まれぬ公の利益であることについては、 承認されているようである。実際、これまでも電話通信における通信内容の規制、 放送における内容の規制において、未成年の保護は常にその理由となってきた。 COPAが採用している「未成年に有害」 な言論の規準 [40]は、 最高裁判所によっても認められ、 48の州によって青少年保護のための規準として採用されている。したがって、 CDA最高裁判決で曖昧であるとして否定された「下品」「明らかに不快」 の規準よりも容認され易いということができる。

また、Webを利用して伝達される表現に限ったのは、 Webが他の種類のアプリケーション、例えばE-mailやNewsに比較して、 より放送に近い機能を果たしていることから、 近い将来のインターネットと放送の融合を睨んで、 Webでの表現を放送による表現と同様の規準で規制しようと図ったものとも考えられ る。仮にWebが放送と同じ規制基準に服するならば、「未成年の保護」 を理由として規制を加えることがより容易に可能になる [41]。さらに、 商業目的での伝達に限ったのは、「商業的言論」 であれば容易にその内容を理由とした規制が可能になるからである。

したがって、表面的にCOPAを把握する限りでは、 CDAの反省にたってより合憲であると判断され易い内容に作られていると評価するこ とができる。しかし、 批判者たちは次の点を問題としてCOPAが違憲であると主張している [42]

まず「猥褻」の内容を決定するのに地域的規準(community standard)が用いられる。 この地域的規準は、また「未成年に有害」の内容を決定するに当たっても用いられる。 それゆえ「未成年に有害」の規準は州法レベルで採用されているのである。 したがって「未成年に有害」の規準が実質的な内容、すなわち、 合衆国憲法修正第5条で要求されている程度の明確性を備えるためには、 規準となる共同体(community)を決定しなければならない。 このことをネットワークの文脈で考えるとき、 ネットワークに独自の共同体規準が立てうるのか、 又は最も厳格な規準を採用する地域に合わせるのか、が明確にならないわけである。 ネットワーク独自の規準は、現在のところ明確ではなく、 また最も厳格な規準を採用する地域に合わせた場合、それ以外の地域では、 憲法的に保護されている言論を抑制する結果となる。

次に「止むに止まれぬ公の利益を達成するため」に「最小限に制限的な手段」 であることに失敗しているとする。まず、Webのみの「未成年に有害な表現」 を禁止したところで、 E-mailやNewsなどの他の手段でそれらの表現が未成年に提供されうるわけであるから、 Webに限定した規制は「未成年の保護」 という目的のために効果を持たないことになる。また、 アメリカの国内法で内容規制を加えたところで、 国外のサーバから有害情報が発信される場合、 それを効果的に遮断することはできない。 この法律が目的に対して直接的かつ具体的な効果を挙げえない一方で、 憲法的に保護されている言論を抑制する効果を発揮するわけであるから、 益少なくして害多い結果になるわけである。

加えて、批判者たちは、CDA判決でも触れられているように、受信者の側で 「未成年に有害な表現」を遮断したり、 排除したりするソフトウェアが利用可能であることを挙げる。 こうしたソフトウェアは実際に市場に提供されており、 有害情報を拒絶したい側が自らの利益のために合理的な価格で購入することができる [43]。 こうした任意による利用者側での遮断は、表現する側を抑制するわけではないので、 憲法的な問題を生じない。また、利用者の側で遮断する場合、 国外から提供される有害情報も効果的に排除することができるわけである。すなわち、 「最小限に制限的な他の手段」が存在するわけであるから、 COPAが採用している規制手段は、憲法違反であることになる。

また、批判者たちは「未成年に有害な情報」を提供する場合の抗弁として使用できる、 17歳未満の利用者を排除するシステムの採用についても批判を加える。「商業目的」 の定義において、情報内容提供の対価として料金を徴収しているサイトだけでなく、 情報内容については無料で提供しているが、 間接的な方法で経済的利益を得ているサイトもまた含まれうることを問題とした。 例えば、 ポルノを提供することで利用者からクレジットカード番号その他の方法で料金を徴収 している場合には、 すでにクレジットカードの利用者に関する情報を参照して未成年を排除することが可 能であるが、 情報内容について無料で提供しているサイトにはそうした機能が備わっていない。 そうであれば、しかるべき投資をして年齢判別システムを備えなければ、 無料のサイトは、COPAによって訴追されることになる。 そうした追加的投資に耐えられないサイトは、結果的に「未成年に有害な情報」 とされうる種類の情報の提供を断念しなければならない。 これが憲法で保護されている種類の言論への耐えられない重荷になるというわけであ る。すなわち、COPAが施行された場合の実質的結果は、有料ポルノサイトが生き残り、 憲法的に保護された言論を掲げているサイトの一部が、 情報提供を断念せざる得なくなる結果となる。

注意すべき点がある。批判者たちが問題としていたのは、 単に非商業的なWebサイトが、 年齢判別のためのシステムを導入するだけの経済的負担に耐えられない点だけではな かった。年齢を判別するシステムが機能するためには、 利用者の身元をサーバ側に明かす必要がある。 このことがネットワークの言論の自由の担保として大きな機能を果たしてきた、 匿名によるWebサイトの利用可能性を奪ってしまうことを批判者達は問題視していた。 すなわち、利用者が成人であることを確認するためには、利用者が「誰」 であるかを判別せねばならず、 そのための仕組みをWebサーバに備えることが強制されるならば、 合衆国憲法修正第1条で保障されている匿名による言論活動を侵害することになる [44]

この点については、COPAにも 「プライバシー保護の要件 (Privacy Protection Requirements)」 とする節を置いて対処していることになっている [45]。これは、 未成年を排除するために収集された個人情報を本人の同意なくして第三者に開示して はならない等とするものである。そこには適用除外があり、(A) 通信を確立するために必要な場合、 また通信を確立するために関連して合法な業務行為 (legitimate business activity) である場合、(B)個人情報の開示を認める裁判所の命令に従う場合、 とされている [46]。 この条項が存在すること自体が、COPAの効果として、 通信中の個人情報をサーバ側が収集せざる得なくなることを立法者が認識してたこと を示している。

極めて対立の大きな政治的問題に関するとき、 技術的方法によって本人が探知できない水準の匿名性と、 技術的には本人が特定可能なのであるが、 法によって本人の特定が禁じられているに過ぎない水準の匿名性は、 とくに政治権力の側にない者にとっては重大な差違である。これまでの通信傍受・ 盗聴の歴史は、捜査する側、捜査される側のいずれも、 技術的に可能なことなら何でもする事実を示している。したがって、 COPAの実質的効果として生じる匿名性の喪失の程度が合憲であるとされない限り、 年齢を規準とする規制は違憲とされる可能性が高く、 かつ年齢を基準に立てられている「未成年に有害」 な表現の規制もまた機能しえなくなることになる。

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4 まとめ

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前節で検討したように、COPAには明白な憲法論上の欠陥があり、 合衆国最高裁判所も違憲判決を出すものと予想される。それ以上に、 その憲法論上の欠陥については、法律の提案時・ 成立時にはすでに予想されていたわけである。したがって、 COPAを強引に成立させた議会には、何か強い動機があったとしか考えられない。

その理由として二つ挙げられる。一つは、 共和党の支持基盤である保守層の価値観へのアピールを狙ったものであるとする考え 方である。保守層を基盤とする議員たちにとっては、 その法律が最高裁で拒絶されるか否かという実際的問題よりも、 未成年の保護のために積極的に活動している態度を常に示しつづけなければならない 理由があるわけである。

もう一つは、本論の主題であるネットワークを政府の統制下に置くという政府側の 「止むに止まれぬ利益」があるとする見方である。アメリカの憲法を前提とする限り、 正面からネットワーク規制に政府が乗り出すことはほとんど不可能である。そこで、 搦め手から実質的にネットワークにおける法執行能力を確立しうる法律を作りたいと いう目的があるのではないだろうか。

COPAの目的は、 通信のデジタル化によって通信傍受能力を脅かされている法執行機関の利益、 すなわちWeb利用者の匿名性の排除を間接的な方法によって達成するというもの ではないかと考えるのである。

Note

[1]
CDAの法案時の正式名称は、 ``A bill to protect the public from the misuse of the telecommunications network and telecommunications devices and facilities (104th Congress, 1st session S. 314)''である。 後に Telecommunications Act of 1996, (Pub. L. 104--104, 10 Stat. 56.)の第5編として組み込まれた。 Thomas <http://thomas.loc.gov> で検索を掛けたが、立法趣旨に関する委員会報告などは見つけられなかった。

COPAの法案時の正式名称は、 ``A bill to amend section 223 of the Communications Act of 1934 to require persons who are engaged in the business of selling or transferring, by means of the World Wide Web, material that is harmful to minors to restrict access to such material by minors, and for other purposes, (105th Congress, 2d session H.R. 3783)''である。 後に 年度末に議会を通過させざるえない予算案である1999年度一般歳出法 (Omnibus Consolidated Appropriations Act, 105th Congress, 2d session H.R. 4328, Pub. L. 105-_)に組み込まれた。なお、 提案時から憲法上の議論を呼ぶと見られていた同法案を一般歳出法の中に組み入れて、 一括して議会を通過させた議会戦術それ自体についても批判がされている。 Jeri Clausing, Committee Adds Internet Filtering Amendment to Budget Bill, New York Times, (26 June 1998).

COPAについては、 下院に報告された委員会報告 (Report 105--775, Mr. Bliley from the Commitee on Commerce, Oct. 5 1998: 以下「報告書」) が提供されており、 そこにおいて同法案に関する議会側の見解が詳細に解説されている。

また、 1999年度一般歳出法では、 13歳以下の児童の個人情報を収集することを制限する``Children's Online Privacy Protection Act of 1998: 以下「COPPA」 (Pub. L. 105-_, Title XIII)''が同時に成立している。

[2]
平成9年 通信白書では、 「情報流通センサス」による情報流通量の分析を行っている。 そのデータから消費情報量 (電話等で受信者が受け取った情報量や視聴者が実際に視 聴した放送番組の情報量等) を計量した場合、 インターネットおよびパソコン通信の消費情報量を1とすると、 AM / FMラジオ放送で25、CATV 放送で366、地上テレビ放送で940という結果になる。 この「情報流通センサス」では、多様なメディアを通じて流通する情報を、 日本語の1語に相当する「ワード」と呼ばれる共通の尺度を用いて計量している。 アメリカの統計資料が手許にないため、アメリカも同様の情況であるかは不明である。 しかし、一般にコンピュータ利用が、テレビの視聴よりも技能的に複雑であること、 またコンピュータの価格がテレビ受像機よりも高額であることから考えて、 未成年が享受している消費情報量に占めるコンピュータ・ ネットワーク経由情報の割合が「情報流通センサス」 の報告と大きく異なるとは考えられない。
[3]
1998年12月第一週に、 Lieberman上院議員 と Kohl上院議員は 「全米メディアと家族研究所 (National Institute on Media and the Family」 と共同で暴力的ビデオゲームが児童の精神衛生に与える影響を議会に報告した。 そこでは、残虐な内容のビデオゲームが未成年の暴力に対する感覚を麻痺させ、 暴力犯罪の原因となっていると指摘している。Ronald Warren Deutsch, 暴力的なゲーム、暴力的な子ども, Hotwired (3 Dec. 1998), .
[4]
V-Chipの「V」は暴力 (violence)を意味しており、 暴力的表現など未成年にとって有害と思われる画像が含まれるテレビ番組を自動的に 遮断するプログラムを組み込んだマイコン・チップの名称。 これをテレビ受像機に組み込むことで、インターネットにおけるフィルタリング・ ソフトウェアと同等の効果を発揮する。 1996年9月にカナダが世界に先駆けV-Chip導入を義務づけたのに続き、 アメリカでは Telecommunications Act of 1996 (Title V subtitle B -- Violence S. 551 et seq.)において、 13インチ以上のテレビ受像機にV-Chip内蔵を義務づける旨決定。 これを受けて1998年3月~ FCC(連邦通信委員会)が、 2000年1月1日までに出荷されているすべてのテレビ受像機にV-Chipを内蔵する旨、 最終決定した。また欧州でも、 ドイツでは一部の受像機メーカーが早くから積極的に取り組む姿勢を見せているのに 加え、EU 内で「国境を越えるテレビ指令」 を改正しV-Chip導入を義務づけようとする議論が盛り上がっている。 <http://www.fcc.gov/vchip/>
[5]
郵政省, 「青少年と放送に関する調査研究会」報告 --報告書-- (7 Dec. 1998).
[6]
暴力表現が未成年の精神に与える影響については 佐々木 輝美, メディアと暴力, (1996) を参照。 また幼児性愛表現が児童に与える悪影響については、 FCCが作成した報告書に記述があると聞いているが未見である。 児童の視点から見て暴力的侵害である性愛活動の対象に、児童自身がなりうる事実が、 児童の心理状態に悪影響を与えるというのがその理由であると聞いている。

[1999/2/1] 東北大学の 山根信二氏から次のような趣旨の指摘を受けた。

いわゆる有害情報が未成年の精神衛生に与える影響については、社会心理学的実験の結果をみるかぎり、肯定的な結果、否定的な結果のいずれもが提出されていること、実験の前提として設定された状況が一般的に生じるものともいえないことから、現在および将来の日本に適用しうるのか疑問があることである。この分野については、私も山根氏も専門家でないため、結論を提示することができない。そこで、この分野についての研究者のコメントを求む。頂いたコメントは、ここから直接参照できる形で提示する。

[7]
この点については、 拙稿「猥褻に関するコメント」 <http://leo.misc.hit-u.ac.jp/hideaki/porn.htm>を参照。
[8]
白田 秀彰, 情報テクノロジーの進展と法的課題, in 情報公開・ プライバシーの比較法, 377--455 (堀部 政男 ed., 1996), 白田 秀彰, アメリカにおけるインターネットへの司法権力の介入, 1996-Apr. IAJ News 16, <http://leo.misc.hit-u.ac. jp/iaj964.pdf>.
[9]
法務省, 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律 (案) 1998.
[10]
「わいせつとは何かという問いに答えた定義付けのうち、 成功した例はないといってよい。それほどわいせつの概念は、 すべての人を納得させることのできない性格をもっている。しかし、社会には、 わいせつなものを取り締まることに賛同する人々が多い。そのため、 支配者は歴史上しばしば社会の秩序を維持するために、 又は権力行使の支持を得るために、わいせつなものの取り締まりを強化した。それが、 言論の自由一般への侵害に繋がったため、 わいせつの取り締まりの強弱が表現の自由保障の程度を見るバロメーターであるとも 言われている。」伊藤 正己, 憲法, 311 (3rd ed. 1995).
[11]
CDAに関する紹介と分析は多数存在する。たとえば邦語文献に限っても 城所 岩生, 米国通信法改正(14), 26-1 国際商法務, 36 (1998), 棚橋 元, コンピュータ・ネットワークにおける法律問題と現状での対応策 (4), 619 NBL 53 (1997), 浅井 澄子, 米国 1996年電気通信法と情報通信産業(3・完), 606 NBL 56 (1996)等がある。
[12]
Communications Act of 1934, 47 U.S.C. Sec. 151 et seq.
[13]
Pub. L. 90--299, 82 Stat. 112.
[14]
合衆国の情報通信政策は、連邦と州とでそれぞれ権限を分有しており、 州内通信に関して、連邦法は適用されない。連邦では、独立行政委員会であるFCCが、 国際・州際通信に対する規制、放送規制、電波監理等を担当することになっている。 なお、盗聴と迷惑電話規制については、佐々木 秀智, アメリカの電気通信プライバシー保護法 in 情報公開プライバシーの比較法, (日本評論社, 1996)を参照。
[15]
Pub. L. 104--104, 110 Stat. 56 S.502, 47 U.S.C. Sec. 223(a)(1)(A).
[16]
Id. 47 U.S.C. Sec. 223(a)(1)(B).
[17]
Id. 47 U.S.C. Sec. 223(a)(2).
[18]
47 U.S.C. Sec. 223(e) 以下に、法的責任を免除されるための防御について規定がある。同条(e)(1) の規定については、under his controlの定義について曖昧さがある。(e)(5) については、in good faith, reasonable, effective, and appropriate action をとることが要求されているが、 判例が存在しない現状では、 いかなる行為が免責事由に該当するかの規準とはならない。また、(e)(6) では、 FCCにin good faith, reasonable, effective, and appropriate action の内容を設定することを認めている。これでは、条文中に 「FCC がネットワーク通信に関する規制権限を持たない」と規定しても、 実質的にFCC 規準がネットワークでの情報流通を制限する効果を生むことになる。
[19]
Reno v. American Civil Liberties Union et al., 521 U.S. _, 117 S. Ct. 2329 (1997).
[20]
47 U.S.C. Sec. 231(a).
[21]
1998年10月5日に司法省から下院商務委員会議長に送られたCOPAに関する報告では、 COPAの内容が「深刻な憲法上の問題を抱えて」いること、この法律を実施することで、 より重要であるハードコア児童ポルノの摘発や児童誘拐の摘発を行うための司法能力 を消耗させてしまう結果になること、 この法律が実際には目的とした効果を発揮することができないことを指摘している。 Assistant Attorney General's views of the Department of Justice on H.R. 3783 (5 Oct. 1998), <http://w ww.aclu.org/court/acluvrenoII_doj_letter.html>.
[22]
American Civil Liverties Union et al. v. Reno, (E. D. Penn. 1998).
[23]
11月19 日の一方的緊急差止命令は12月4日に失効することになっていたが、 ペンシルヴァニア東部地区連邦地裁はこの差止命令を1999年2月1日まで延長する命令 を発給したため、いまだに施行停止状態である。また、 この暫定的差止命令に関する公聴会が開かれることになっていたが、 1999年1月20日から22日までの 3日間に延期した。
[24]
47 U.S.C. Sec. 223(a)(1). 47 U.S.C. Sec. 223(h)において、telecommunications deviceは「放送事業者、 CATV事業者を除外し、また、双方向コンピュータ・サービスを除外する」 ものとして定義されている。定義 (101 Stat. 56, S.3 Definition) においてtelecommunications の定義として 「利用者によって指定された地点との間で、内容の変更を加えずになされる伝送」 があげられ、telecommunications equipemntの定義として 「顧客の家屋に備え付けられたものを除外し、通信事業者に用いられる設備」 とされていることから、顧客の家屋に設置されたものも含む、 広い意味での通信機器を意味するものと考えられる。
[25]
47 U.S.C. Sec. 223(d). 定義(47 U.S.C. Sec. 230(e)(2))では「多数の利用者をサーバに接続させるサービス」 と定義されている。
[26]
47 U.S.C. Sec. 231(a)(1). 定義(47 U.S.C. Sec. 231(e)(1))では、 「hypertext transfer protocol (html) およびその後継通信手順を利用して、 インターネットを経由し、公にアクセスすることができるコンピュータ・ サーバを基礎にしたファイル書庫にファイルを置くこと」としている。
[27]
47 U.S.C. Sec. 231(b).
[28]
47 U.S.C. Sec. 223(a)(1).
[29]
47 U.S.C. Sec. 223(d)(1).
[30]
47 U.S.C. Sec. 231(a)(1).
[31]
...under 18 years of age. 47 U.S.C. Sec. 223(a)(1)(B) etc.
[32]
...any person under 17 years of age. 47 U.S.C. Sec. 231(e)(7).
[33]
猥褻について、 Roth v. United States, 354 U.S. 476. 名誉毀損について、N.A.A.C.P. v. Clairborne Hardware Co., Miss., 458 U.S. 886, New York Times Co. v. Sullivan, 376 U.S. 254.
[34]
Miller v. California, 413 U.S. 15.
[35]
Id. at 30.
[36]
Valentine v. Chrestensen, 316 U.S. 52.
[37]
Pittsburgh Press Co. v. Pittsburgh Comm. on Human Rights, 413 U.S. 376.
[38]
Turner Broadcasting, Inc. v. FCC 114 S. Ct. 2245, 2470.
[39]
Simon & Schuster, Inc. v. New York St. Crime Victim's Bd., 502 U.S. 105 115--116.
[40]
猥褻表現および(1) 全体として、青少年において裸体、 性又は排泄行為に関する性的な好奇心を喚起するものであり、(2) 何が青少年にとって適切であるかという観点から見て侵害的な方法で、 それが通常であるか変態的なものであるか、実際のものであるか演技であるか、 サディ・マゾヒスティックなものか、その他の異常行為であるかを問わず、 本質として性的な行為を描写、提示、又は記述すること、または生殖器、陰部、臀部、 又は性的に成熟した女性の胸部を淫らにさらすこと、(3)全体として、 青少年にとって真面目な文学的、芸術的、 政治的または学術的価値を欠くものとされている。New York v. Ferber, 458 U.S. 747.
[41]
FCC v. Pacifica Foundation, 438 U.S. 726.
[42]
Center For Democracy And Technology, Constitutional Analysis of the Oxley Bill --- The Child Online Protection Act (H.R. 3783), (Sept. 24, 1998) <http://www.cdt.o rg/speech/constitutional.html>.
[43]
Center for Democracy and Technology, Internet Family Empowerment White Paper: How Filtering Tools Enable Responsible Parents to Protect Their Children Online, 1997. しかし、こうしたフィルタリング・ ソフトウェアの採用が憲法上の問題を生じないのは、 それが利用者の側の意思に任されている場合にかぎられる。 仮に国家が特定のフィルタリング・ソフトウェアの採用を強制する場合には、 国家による検閲と同じ効果を生むことになる。また、市販のフィルタリング・ ソフトウェアは、 期待されているよりも広い規準において表現内容を遮断してしまうようである。 加えて、 いかなる規準において表現内容の格付けを行っているかが不明確であるという。 崎山 伸夫, PICSを知る -- Webブラウザの 「コンテンツ規制を有効にする前に, (10 Dec. 1998, 東京大学 山上会館).
[44]
匿名による言論活動は、政治的自由を担保する権利として、 修正第1条によって保護されている。この点に関連して、 また一般的にネットワークにおける表現の自由について山口 いつ子, サイバースペースにおける表現の自由・再論, 1997 東京大学社会情報研究所 紀要 33 も参照されたい。ただし、 近年 EU諸国では、ネットワーク通信における匿名性を排除しようとする動きがある。 また、我が国においても匿名による情報発信を禁じようとする動きが見られる。 確かに発言者を特定しうることは、発言者の発言に対する責任感を増すだろう。 しかし、政治的・ 宗教的信念を述べることが時として生命をも脅かした時代と同様の覚悟を、 再び現代においても要求するような結果とならないことを希望する。Mark A. Lemley and Lawrence Lessig, Why CDA 2.0 Will Fail, 1998 <http://www.cdt.or g/speech/lemley_lessig.html> では、 成年の修正第1 条の利益を侵害しない方法として、 年齢判別システムの受益者である未成年者の側に IDを付与することを提案している。 この未成年者IDシステムとCOPPA の規定との間の整合性については、疑問がある。
[45]
47 U.S.C. Sec. 231(d).
[46]
47 U.S.C. Sec. 231(d)(2)(A), (B).

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to Hideaki's Home 白田 秀彰 (Shirata Hideaki)
法政大学 社会学部 助教授
(Assistant Professor of Hosei Univ. Faculty of Social Sciences)
e-mail: shirata1992@mercury.ne.jp